慢性腎臓病の方のための正しい水分の摂り方を解説します

生活習慣


健診などで腎臓の機能が悪いと言われた方で、

「水分を良く取るようにした方がいいですよ」

と言われたことはないですか。

本記事はそんな方に読んでもらいたい内容です

✔️患者さんからよく聞かれる水分に関係した質問を3つ挙げてみました

  1. 腎臓が悪いけどどれくらい、どんな水分を摂ったらいい?
  2. たくさん水を飲めば慢性腎臓病は良くなる?
  3. たくさん水分を取ると、夜トイレに行きたくなるのが辛いがどうしたらいい?

この記事ではこれらの質問にお答えしていきます

✔️本記事の内容です

  1. 慢性腎臓病の方は水分は多すぎても少なすぎても腎臓にはよくない。適度な量について解説します
  2. 慢性腎臓病は水分を多く摂っても、腎機能が改善するわけではないです
  3. 夜間頻尿の方必見!やめてみよう、夜のお酒やカフェイン。

✔️著者の経験

この記事を書いている私は、慢性腎臓病の患者様15年以上の診療経験があり、腎臓専門医と透析専門医として診療に当たっています。

✔️本記事で読者の方が得られること


この記事を読むことで、腎臓が悪くてどれくらい水分をとるべきか困っている方の悩みが改善され、より腎臓を保護する生活ができると期待しています。

では、早速本題へ入っていきましょう

①慢性腎臓病の方は水分は多すぎても少なすぎても腎臓にはよくない。適度な量を解説します

 ①-1 適度な水分をとるメリット

  • 脱水による腎臓の機能低下を防ぐことができる                       解説;脱水が起こると腎臓への血流が低下をして、腎臓の機能そのものが低下をしてしまいます。昨今の酷暑では脱水で腎機能が一時的に悪くなる方はよく見かけます
  • 痛風などで引き起こされる尿管結石を予防する                       解説;尿酸はビールのプリン体に多く含まれていて有名ですが、尿から排泄をされます。水分が少ないと尿の排泄が減り、血中の尿酸値が高くなり、結石ができやすくなります。

 ①-2 水分を取りすぎて起こるデメリット

  • ミネラルのバランスが崩れ、【低ナトリウム血症】という状態が起こります。夏場に水分だけを取ると起こりやすい病気です。
  • 心臓の疾患がある方では、水分量が多いと心不全を起こすリスクがあります。
  • 頻尿になる⇨水分取る量が増えますので、トイレは回数が増えてしまいす。

 ①-3 適度な水分とは?どれくらいなのか?

ご自身の腎臓のステージをまず確認しましょう

健診や病院の採血の結果をご覧ください

【eGFR】という数値がステージを決める数値になります

腎臓のステージごとで推奨される摂取変わるため、まずご自身の腎臓のステージを確認しましょう。

eGFR慢性腎臓病ステージ症状
90ーG1正常な状態
69−89G2腎機能がやや低下、症状はなし
45−59G3aむくみや尿の異常が少し現れる
30-44G3b自覚症状はG3aと変わらない
15-44G4だるさ、むくみ、息切れが強くなる
-14G5吐き気、食欲低下、強い倦怠感出現

結論からお伝えします👇

  • 慢性腎臓病ステージG1,G2⇨水分制限は特にありません
  • 慢性腎臓病ステージG3〜G5⇨1日1L〜1.5Lの水分摂取推奨

 ①-4 慢性腎臓病ステージG3-G5の水分量について解説

✔️ステージG3,G4 の方

水分摂取1日1〜1.5Lが推奨とされています

1日1L/日未満だと腎機能が悪化するリスクが上がる研究結果が出ています。脱水は腎機能悪くするので注意しましょう。

✔️ステージG5

1日水分摂取量のベストは1日1〜1.5L/日

1L未満でも、2L以上でも腎機能が悪化しするようです。まさに多すぎても、少なすぎても腎臓に良くないのです。ステージ5の方は厳密な水分摂取を心がけてください

参考文献は以下の通り

Wagner S, et al.Nephrol Doal Transplant 2022:37:730-9

2023年CKDガイドライン

 ①-5 水分量の把握がとても大切

患者さんに「水分どれくらいとっていますか?」と聞くと、良く返ってくる答えは「コップ◯杯飲んでるから大丈夫、たくさん飲んでます」と言われます。

私が伝えたいのは・・・

コップ○杯は非常に曖昧ですので、量を把握しましょう。

コップと言っても、おちょこからビールジョッキまで色々ですよね

ご自身ではたくさん飲んでいるつもりで、よくよく確認すると結構少なめだったというのはよくある話なんです。

毎回飲む量を測るのは大変なので、1日飲める量が入るボトルを買いましょう。そこから飲んでいくのが一番おすすめ!

ペットボトルなら500から600mlのもの2本と決めて取るのもいいです。

ただ、高齢の方など「湯呑みや決めたコップで飲みたい」と言われます。湯呑みやコップで飲みたい場合、入れるだいたいの量を計測して、何杯飲んだか正の字でいいので記録するのもやり方です。

何はともあれ、腎臓の機能が低下している方は、水分を取る量を測りましょう。

   

 ①-6 何を飲んだらいい?

「コーヒーたくさん飲んでたから水分とってると思ってました」という患者さんもいます

水分と言ってもさまざまですので、具体的にお示しします。

  • 水やお茶(麦茶、玄米茶、ほうじ茶)はどんな方も飲めます。
  • 飲まない方がいいもの;缶コーヒー、ジュース類
  • コーヒーは利尿作用あり、カリウムも含まれていますが、コーヒーそのものが腎臓を悪くするデータは今の所ありません。何杯までならいいかなどの具体的なエビデンスはありません。
  • 参考までに、私が患者さんに話していることは、カリウム制限が必要な方は「コーヒー1杯まで」としています。これは主治医によく確認をしてください。
  • カリウムが高い方は、野菜ジュース・100%ジュースはカリウムを多く含むため控えたほうがいいです。

参考文献; Kanbay M,et al.J Ren Nutr 2021:31:5-20

Bigotte Vieira M,et al.Nephrol Dial Transplant 2019;34:974-80

 ①-7 体の水分量を把握する方法

飲んでいる水分量が本当に、あなたにちょうどいいかどうかを調べる手段とは?

体重を測ることです

1週間で体重がkg単位で変わることがあれば

それは水分による影響と考えていいかと思います。

他に、むくみは水分と塩分摂りすぎのサインです。

また、ジムや運動で汗を多くかく方は水分を増やしてとる必要もあります

②慢性腎臓病の方で水分を多く摂ったからといって、腎臓の機能は改善しない

  • 慢性腎臓病の方は水分を多くとっても腎機能が改善はしないです。ただし、極度に足りないと腎機能が悪くなるため、適切な量を取ることを心がけてください
  • 必ずしも、多く水分を取ると腎臓の予後が良くなるわけではないことも研究結果から出ていますので、無理矢理多くとることは勧めません。

参考文献;Clark WF, et al. JAMA. 2018;319:1870-1879.

③たくさん水分を取ると、トイレに行きたくなるのが辛いがどうしたらいい?

答え👉夜間のお酒やカフェイン摂取をまずやめてみましょう

男性の患者さんは夜トイレの回数が多くなる悩みは私もよく聞くので、切実な問題と思います

 ③-1 今日からできる!夜間のトイレ回数を減らすコツ3選

  1. 夜の飲酒やカフェイン摂取を減らす→アルコールやカフェインの利尿作用を抑えるため
  2. 水分摂取は夕方まで。寝る前3時間は控えておく
  3. 塩分の摂取量を減らす(1日6g未満にしましょう)

 ③-2 夜間頻尿の原因と対策について 原因編

  1. 尿の量がそもそも多い病気がある →原因;糖尿病など
  2. 夜間だけ尿が多い→原因;寝る前の水分摂取が多い、高血圧や心不全があるなど
  3. 膀胱の容量が小さい
  4. 過活動膀胱がある(尿量が少なくても膀胱が過敏になりすぐトイレへ行きたくなる状態)
  5. 前立腺肥大がある
  6. 不眠症(眠りが浅くてすぐトイレへ行きたくなる)

 ③-3 夜間頻尿の対策編

  • 糖尿病、高血圧、心不全、睡眠障害がある場合、抱えている疾患の治療を優先しましょう
  • 前立腺肥大、過活動膀胱、膀胱の容量の問題などは泌尿器科で適切な治療薬を処方してもらいましょう

まとめ

  • 慢性腎臓病の方は水分の摂取が多ければいいわけではないが、目安は1L-1.5Lをとるといいでしょう
  • 水分の種類は缶コーヒーやジュース類は避けましょう
  • 飲んでいる水分量を測る習慣をつけた方がいいです
  • 夜間の泌尿がある方は、内科の治療を行うとともに、泌尿器科への相談も必要な場合があります

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