腎臓が悪くなると貧血になることはご存知でしょうか?これは【腎性貧血】と呼ばれる貧血です。
腎機能が低下して、貧血の注射や飲み薬を服用されている方もいらっしゃるかと思います。
さて、「なんで腎臓と貧血が関連あるの?」と疑問持たれるのではないでしょうか。
✔️この記事では、以下の腎性貧血のギモン3選を解説していきます
- なんで腎臓が悪くなると貧血になるの?
- 何か症状があるの?
- 治療法は何がある?
✔️こういった疑問に答えます
- 実は腎臓が造血ホルモンを作ってたんです!
- 腎性貧血でよく見られる症状5選
- 食べ物では改善しない理由と最新の治療法を解説
✔️著者の経験について
この記事を書いている私は、慢性腎臓病の患者様15年以上みていて、腎臓専門医と透析専門医として診療に当たっています。
この記事を読むことで腎臓が悪くなるとなぜ貧血になるかがわかり、症状や治療法を理解できると思います。そして、今後より納得して治療を受けられます。
では、本題に入りましょう!
①実は腎臓が造血ホルモンを作ってたんです!
腎臓は「エリスロポエチン」と呼ばれる、造血ホルモンを作っていたんです。造血ホルモンがないと、骨髄では血液を作ろうとしなくなってしまい、結果貧血になってしまうんです。
②腎性貧血でよくある五つの症状紹介します
②−1貧血とはそもそも何か?
「ヘモグロビン」というものが全身へ酸素を運ぶ役割をしています。このヘモグロビンが低下している状態をさします。酸素を全身へ運べないことで、さまざまな症状が出てきます
2−2;症状
②−2 よく見られる症状5つ
- 息切れ
- 動悸
- めまい
- ふらつき
- 疲れやすい
これらの症状は腎性貧血に限らず他の貧血でも現れます
②−3俗に言う「貧血っぽい」というのは違う
朝礼で倒れてしまう体質の方が「私貧血ぎみです」と言うのですが、これは起立性低血圧や迷走神経反射といったもので、医学的に言う貧血とは異なりますのでご注意を・・・
③治療法について
③−1注射と内服があります 注射編
不足しているエリスロポエチンを直接補充します
方法;皮下注射⇨インフルエンザの予防接種と同じ打ち方です
結構患者さんからは「痛い!」というお声伺います。
③−2 内服編
HIF-PH阻害剤(ひふぴーえいちそがいざい)と呼ばれる比較的新しい種類の薬が世の中に出てきました。
アスリートが高地トレーンングするのはご存知でしょうか?高地へ行くと、低酸素になり、体で血球を増やそうとする反応が起きます。
このメカニズムを薬で再現したイメージです。
メリット;注射と違い痛みがない
デメリット;鉄剤や下剤と同時に服用できないものがあります
悪性腫瘍や糖尿病による目の病気がある方はその病気を悪化する恐れがあるので要注意です。
③−3注射と内服の違いについて
大きな違いは2点あります
治療の間隔 | 場所 | |
注射剤(エリスロポエチン製剤) | 2−4週間に1回 | 病院で注射 |
内服薬(HIF-PH阻害剤) | 毎日内服か週に3日内服の2パターン | 自宅で服用 |
③−4食べ物で治る貧血ではない?
答え👉食べ物ではよくならない貧血で、注射や内服が必要です
私の外来に腎機能が低下していて、貧血もあるので腎性貧血ではないかと紹介がありました。この方は既に腎機能がeGFR20(正常の腎機能の1/5)まで低下していました。
この方にはエリスロポエチンの注射を行いました。
その後は貧血は改善をしましたが、こんな質問がありました・・・
食べ物で良くならないんですか?
貧血=鉄不足?
なら、食べ物で治りそうと思ったようでした
しかし、この貧血は造血ホルモンが原因です
残念ながら食べ物では良くならないのです
鉄欠乏性貧血と呼ばれる若い女性に多い貧血は、鉄剤の多い食事も治療法の一つですが、腎性貧血は食べ物では改善しません。
③−5腎性貧血は完治はしないの?
答え👉完治はしません
基本的には腎臓が悪くなると腎性貧血は皆さん起こります。
治っても、エリスロポエチンは足らなくなると、貧血になってしまうので治療は継続的に必要です!
治療で一旦貧血が良くなっても、症状がないと服用をやめたり、受診が中断をする方がしばしば見えます。その結果、また貧血になってしまいます。
貧血が持続すると、慢性的に低酸素の状態になってしまい、腎臓がさらに悪くなることがわかっています。
貧血の治療も腎臓を守るために大切です
まとめ
- 腎臓が悪くなると腎性貧血と呼ばれる貧血になります
- 腎性貧血はエリスロポエチンという造血ホルモンの不足が原因で起こります
- 治療は注射か内服で行えます。それぞれ一長一短のため、ご自身の納得した方法を選択してください
- 腎性貧血は継続的な治療が必要な病気です
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