慢性腎臓病(CKD)と診断されたとき、

たんぱく質は控えましょう
言われたことがあるかもしれません。
でも最近の研究では、
「動物性たんぱく質を減らして、植物性に切り替えると腎臓にやさしい」
という報告が相次いでいます。学会でも植物性蛋白はいいのではないかと言われる機会が増えました。
これまで、CKDの患者さんへたんぱく質を減らすことが当たり前でした。
現在、その考え方が変わりつつあります。
植物性タンパク質が良い可能性が言われています
- 腎臓への過剰な負担(糸球体過剰ろ過)を起こしにくい、
- 血圧に良い効果をもたらす
- 酸性アルカリ性のバランス、リンの代謝にも好影響を及ぼす
どんな種類のたんぱく質を選ぶかが大切になってきたのです。
今日は、最新の研究をふまえて、CKD患者さんが植物性たんぱく質をうまく取り入れる方法を、わかりやすくご紹介します。
そもそも「植物性たんぱく質」ってなに?

たんぱく質には大きく分けて2種類あります。
- 動物性たんぱく質:肉・魚・卵・乳製品などに含まれる
- 植物性たんぱく質:豆類・大豆製品・ナッツ・全粒穀物などに含まれる
これまで、動物性のたんぱく質の摂りすぎは腎臓に負担をかけやすいとされてきました。
一方、植物性たんぱく質は、腎臓への負荷が少なく、体にやさしい代謝をするのが特徴です。

新しい研究結果をいくつか紹介します
報告① 植物性たんぱく質が多い人は、死亡リスクが低かった
アメリカの大規模な健康調査「NHANES III」のデータ(平均8.4年の追跡)から、次のような結果が報告されました。
特に、eGFRが60未満のCKD患者さんに注目したところ、
- 植物性たんぱく質の割合を33%増やすと、全体の死亡リスクが23%減少 ハザード比(HR)0.77、95%信頼区間:0.61–0.96
- 植物性たんぱく質の割合が高いグループ(全体の43.5%以上)では、死亡リスクが33%減少 HR 0.67、95%CI:0.46–0.96
📖 出典:Am J Kidney Dis. 2016 Sep;68(3):353-62.
👉「植物性たんぱく質が多いほど、長生きの可能性が高まる」という結果です。
報告② 腎機能の低下リスクも下がる(CJASN, 2019)
次に、ニューヨークの900人を対象とした「Northern Manhattan Study」では、
- 植物性中心の食事をしている人は、腎機能(eGFR)の低下リスクが12%低かったという報告があります。
📖 出典:Clin J Am Soc Nephrol. 2019 Oct 7;14(10):1410-1420.
👉「植物性の食事が腎臓にいいのでないか」という考え方が、少しずつ実証されてきています。
実際、どんな食材を選べばいいの?
植物性たんぱく質をとるなら、以下のような食品がおすすめです。
食材 | 例 | メモ |
---|---|---|
豆類・大豆製品 | 豆腐、納豆、豆乳、枝豆 | 良質なたんぱく源。味付けの塩分に注意 |
ナッツ・種子 | アーモンド、くるみ、ごま | 少量でエネルギー補給にも◎ |
全粒穀物 | 雑穀米、オートミール、全粒パン | 食物繊維も豊富。白米との置き換えに |
野菜類 | ほうれん草、ブロッコリー、さつまいも | カリウム多めのものは調理にひと工夫 |
カリウムが心配な方へ
ほうれん草やさつまいもなどカリウムが多い食品も、茹でこぼす、薄切りにして水にさらすことでカリウムを減らせます。管理栄養士のアドバイスをもとに調整してみてください。
植物性たんぱく質の食事はこう取り入れてみよう

いきなり全部を植物性にする必要はありません。無理なく続けるコツは以下の通りです。
- 週に2〜3回、「肉なし」食を取り入れる
- 朝食や昼食を豆腐・納豆メインに変えてみる
- ハンバーグを豆腐ハンバーグに置き換えてみる
- 間食にゆで大豆やナッツを取り入れる
腎臓にやさしいとされる「PLADO(植物性たんぱく中心の低たんぱく食)」では、たんぱく質のうち半分以上を植物性にすることが推奨されています。
植物性蛋白は腎臓だけじゃない、他のメリットがある
植物性たんぱく質を取り入れることのメリットは、単に「腎臓にやさしい」だけではありません。
- 糖尿病や高血圧のコントロールにもつながる
- 体の酸性度を下げて、尿毒素の発生を抑える
- 食物繊維が豊富で、便秘や血糖値の安定にも役立つ
- 長期的には透析導入や死亡リスクを下げる可能性がある
もちろん、エネルギー不足や栄養バランスには注意が必要なので、主治医や栄養士と相談しながら取り入れましょう。
「植物性だから安全」ではない?注意点

植物性といっても、ポテトチップスや果汁100%ジュースのような「加工食品」は別物です。
研究では、「不健康な植物性食品」を多く摂ると、逆に腎機能を悪化させてしまうリスクがあると報告されています。
また、食事制限のあるCKD患者さんでは、カリウムやリンの管理も重要です。
特にリンは、植物性の方が吸収率が低いとはいえ、摂りすぎれば高リン血症の原因になることもあります。
まとめ:できることから、少しずつ
CKDと診断されても、「食べること」を楽しむのは悪いことではありません。
植物性たんぱく質をうまく活用することで、腎機能を守りながら、美味しく健康的な食生活ができます。
迷ったときは「週に2回、お肉をお豆に置き換えてみる」など、できるところから始めてみましょう。
あなたの腎臓と人生を守るために、今できる選択を。
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