慢性腎臓病のステージからあなたの腎臓の状況を解説します

CKD

慢性腎臓病と診断されて、ご自身がどこのステージに該当するかわかるでしょうか。慢性腎臓病のステージから余命がわかるの?透析までどれくらいなの?と思われると思います。

実は、慢性腎臓病のステージは余命を表しているものではないです。今、自分がどこの段階にいるかを明示したものです。

透析にどれくらいでなるか?という不安も誰でも持たれると思います。それも、個々の腎臓の機能の低下のペースや治療状況、元々の病気によっても変わります

大切なことは、今何ができるかをわかってもらい、腎機能が悪化を予防していくことが大切です

このブログは慢性腎臓病の患者様を15年以上診察してきた専門医のyodoがお話します

慢性腎臓病のステージはG○と表現をします。eGFRと呼ばれる数値からステージを決めています。

ステージが進むほど腎臓の機能は悪くなります。

eGFR慢性腎臓病ステージ症状
90ーG1正常な状態
69−89G2腎機能がやや低下、症状はなし
45−59G3aむくみや尿の異常が少し現れる
30-44G3b自覚症状はG3aと変わらない
15-44G4だるさ、むくみ、息切れが強くなる
-14G5吐き気、食欲低下、強い倦怠感出現

余命の判断まではできません!

癌のステージとは違って、余命を決めることはできません。その理由は、慢性腎臓病はその原因の病気や治療の内容により、生命予後は変わるからです。

ただ、慢性腎臓病のステージが進むごとに、心臓や脳血管の病気による死亡リスクは上がります。また、蛋白尿が出ていると、その死亡率は1.5-2.0倍にまで上がります。

それを表したデータがあるのでご覧ください

文献 Nagata M,et al Am J Epidemiol 2013; 178: 1-11.

このデータは40000人弱の方のデータを集積しています。腎臓のステージごとに狭心症や心筋梗塞で亡くなる方のリスクを見ています。棒が高くなるほどリスクが上がります。eGFRが下がる(=ステージが進む)ごとに、棒が高くなるのがわかるでしょうか?

また、蛋白尿が出ている方はさらに、心臓の病気になるリスクも上がることもわかっています。

【結論】

慢性腎臓病のステージが進む(悪くなる)ごとに、心臓の病気で亡くなるリスクは高くなります。蛋白尿が出ているとさらにそのリスクは倍増してしまいます。

ここでは、どのような方が透析になりやすいかのリスクをお示しします。

該当する項目が多い方は要注意です。

□蛋白尿が出ている

□高血圧がある

□糖尿病を患っている

□脳出血や脳梗塞といった脳の血管の病気の既往がある

□若くから慢性腎臓病になっている

□高齢者である

□男性の方

参考文献 Levey AS,et al.Am J Kidney Dis 2003;42:626-30 , Uhlinng K,et al.Ann Intern Med 2012;156:599-601

該当する項目が多いから、じゃあどうしたらいいの?と思われるかと思います。

その説明を次にしますね。

  1. 食事療法
  2. 運動療法
  3. 薬物療法
  4. 睡眠時間の確保
  5. ストレスを溜めないようにしましょう
  6. 歯周病を治しましょう
  7. 禁煙をする🚭

それぞれについて簡単に説明します

慢性腎臓病のステージにより食事療法は変わってきます。ここでは一般的なことをお伝えします

危険な食事の仕方は「朝を抜く」や「夜のドカ食い」といったことはやめましょう。理想的なのは朝七時、昼12時、夜6時頃です。食事と食事の時間を空けすぎてしまうのをまず気をつけましょう

日本人は塩分摂取量が多いと言われてます。慢性腎臓病がある方は塩分量を一日6g未満へしましょう。どうするといいか?塩分を減らす工夫紹介します

  • 汁物は飲まない:味噌汁や麺類の汁にはたくさんの塩分が入っています。具だけ食べて汁は我慢しましょう。
  • 加工食品や外食の頻度を減らしましょう。
  • 調味料を醤油からポン酢へ変えてみるのもいいです。ケチャップやマヨネーズは塩分が少ないのでうまく活用するといいです。
  • 塩分が多いと美味しく感じてしまうので、薄味に慣れるようにしましょう。

ステージG3b以降の方(eGFR44以下)の方はタンパク質の摂取制限を行う必要がああります。ただ、どれくらいの量まで減らすかは、出ている蛋白尿の量や個人の体型や食事量など様々な要素を元に決めます。主治医の先生とよく相談をして、栄養士さんと面談をされるのがいいでしょう。

ウォーキングなどの簡単な運動を適度に行った方が、腎機能が改善されることがわかっています。誰でもやれる手軽な運動療法の例を紹介します。

  • 仕事帰り一駅分は歩く
  • エレベーターではなく、階段を使ってみる
  • ラジオ体操を行う(週2〜3回)
  • ウォーキングを行う(一日6000-10000歩ほどを目指しましょう)
  • 軽負荷のウェイトトレーニングを行う。1セット10-15回ほど。体力に応じてセット数を決めましょう。

心臓や肺のご病気がある方は運動療法の内容をよく主治医の先生とご相談ください。

ここ数年で、慢性腎臓病の治療は大きく進歩しています。蛋白尿が出ている方は使用できる薬剤が増えています。

治療開始は・・・

earlier than better!!

という言葉の通り、薬物治療は早ければ早い方がいいです。多く処方される薬剤は蛋白尿のあるなしでも変わりますが以下の通りです

  • 血圧を下げる薬(ACE/ARBと呼ばれる種類です)
  • 尿から糖を出す薬(SGLT2阻害剤と言われます)
  • 貧血を治す薬
  • コレステロールを下げる薬 

一般的なものを挙げましたが、個々により変わります。

日本人は世界の中でも特に睡眠時間が短いです。しかし睡眠時間5時間未満の方は蛋白尿が増えることも言われています。また、睡眠の質が腎臓の機能に影響することもわかってきています。

質の良い睡眠をとるためにできることを紹介します 

  • 朝起きたら太陽の光を浴びましょう
  • 寝る前3~4時間以内のコーヒーなどカフェインは控えましょう
  • 入浴は就寝の90分から2時間前が良いです
  • スマホやパソコンを寝る直前まで見るのはやめましょう
  • 寝る前はストレッチやリラックスできる音楽を聴いて心と体を落ち着けて行きましょう

 

ストレスの多い現代社会を皆様生活しているので、なかなかストレスを溜めないというのも簡単なことではないかと思います。

ストレスがかかることで、血圧が上がりやすく腎臓へ負担をかけてしまいます。またストレスで過食にもなりやすいです。

ストレスを和らげる今日からできること

  • 朝日を浴びて幸せホルモン(セロトニン)を分泌する
  • 適度な運動をしましょう
  • 自分の好きなことをする時間を持ちましょう
  • 五感を研ぎ澄ましましょう。いい香りを嗅ぐ、リラックスできる音楽、自然散策をするなどです。

歯周病という病気は聞かれたことあるでしょうか。45歳以上の40%は歯周病があるというデータがあります。歯周病は以下の様に、色々な病気と関連があると言われています。慢性腎臓病もその一つです。

tarzan webより引用

慢性腎臓病があると歯周病が悪くなりやすく、歯周病が悪くなると腎臓の機能が悪くなるという関連があります。

慢性腎臓病がある方は、一度歯科受診をして歯周病のチェックをしてみてください。食べるときはゆっくり噛んで唾液分泌を促しましょう

喫煙による腎機能への影響は、喫煙の本数が多いほど大きくなります。また、慢性腎臓病気のステージが進んでいる方ほど喫煙の影響を受けやすくなります。

喫煙は百害あって一利なしです

腎機能を少しでも保護したい気持ちがあれば禁煙に取り組みましょう。

  • ご自身の慢性腎臓病のステージを把握しましょう
  • 慢性腎臓病のステージは余命までは判断できません
  • ステージが進むほど心臓の病気で亡くなるリスクは高いです
  • 早く治療を開始して、慢性腎臓病が進行しないことが大切です
  • 腎臓病を悪化させないために今できることを今日から始めましょう。やれることは沢山ありますので、一つづつやってみましょう

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