慢性腎臓病があると骨粗鬆症になるってホント?理由と治療法を簡潔に解説します

CKD

医師より「腎臓が悪くなると骨が脆くなるからこれ内服をしてね」と言われて、

【アルファロール】という薬を処方されている方見えるのではないでしょうか

なんで、腎臓悪くなると、骨が脆くなるの?カルシウム取るだけじゃだめ?

とか疑問思われると思います

このような方向けに記事を書いていきます


✔️今回はこのような質問にyodoが答えていきます

  1. なんで慢性腎臓病だと骨粗鬆症になるのか?
  2. どんな検査をするとわかる?
  3. 一般的な慢性腎臓病の骨粗鬆症の治療は?カルシウムとってたら良くないの?


✔️まず質問の答えを先に示します

  1. 腎臓が悪くなるとビタミンDの活性化ができなくなるから
  2. 採血、骨密度チェック
  3. 活性型ビタミンDの内服が必須です。また、注射治療もあります

✔️この記事を読むことでわかること

慢性腎臓病があると骨が脆くなる理由が納得でき、どのような対策が必要なのかわかるようになります


✔️この記事を書いている私の説明

この記事を書いている私は、慢性腎臓病の患者様15年以上みていて、腎臓専門医と透析専門医として診療に当たっています

現在は慢性腎臓病の患者さんの治療や腹膜透析の外来を行っています

では早速本題へ入ります

1なんで慢性腎臓病だと骨粗鬆症になるのか

これには、カルシウムをどのように体が吸収をして骨を作るかわかりやすく説明をします

大前提として、ビタミンDからカルシウムが作られることを知っておいてください

1-1| 健康な方のカルシウム合成の流れ

🌞日光 にあたり皮膚でビタミンD3が合成されます

また、食べ物からもビタミンD3は取り込めます

肝臓で25(OH)D に変換

腎臓で1,25(OH)2D(活性型)に変換

小腸でのカルシウム吸収UP

骨の形成・維持をされます

1-2 | 慢性腎臓病の方のカルシウム合成の流れ

🌞日光 にあたり皮膚でビタミンD3が合成されます

また、食べ物からもビタミンD3は取り込めます

肝臓で25(OH)D に変換

腎臓で1,25(OH)2D(活性型)に変換 ⇦⇦⚠️CKDだとここが不足!!

小腸でのカルシウム吸収が低下する

骨の形成・維持ができなくなる!!

骨粗鬆症になります

結論;腎臓病で腎臓が弱ると、活性型ビタミンDが作れなくなるんです💦

その結果…

カルシウム吸収低下により低カルシウム血症になって骨がもろくなります

1-3 |副甲状腺ホルモンの過剰分泌により骨粗鬆症になる

 1-3-1| 副甲状腺とは何をしているのか

甲状腺にくっついている副甲状腺という臓器があります

ご存知でしょうか?

下の図の甲状腺に豆粒みたいについている4つの臓器を指します


この臓器の主要な役割は3つあります

  • カルシウム濃度を上昇させる
  • リンの濃度調整に
  • 骨の代謝を司る

1-3-2 |慢性腎臓病があると副甲状腺の機能亢進になる

大きく2つの流れから副甲状腺が亢進して骨粗鬆症が起きてきます

カルシウムとリンそれぞれの視点からみてみます

<その1;カルシウムを視点に>

上記のように血液中のカルシウムの濃度が下がります

副甲状腺ホルモンが分泌多くされます

骨を壊して、血液のカルシウム濃度を上げるように働きます

骨粗鬆症になります

<その2;リンを視点に>

腎臓が悪くなるとリンを尿から排泄できなくなり、リンの値も上がります

リンを下げようと副甲状腺ホルモンが多く分泌されます

骨を破壊するようになります

結果、骨粗鬆症になります

1-3-2| 慢性腎臓病と二次生副甲状腺機能亢進症

慢性腎臓病になると、二次的に副甲状腺の機能が亢進してしまいます。

これを、【二次性副甲状腺機能亢進症】と呼んでいます

上記で書いたように低カルシウム血症により、副甲状腺ホルモン(PTH)という

ホルモンの分泌が増加します。

PTHの過剰分泌は骨からカルシウムを溶け出させ、骨を弱くしてしまいます。

本来、副甲状腺はカルシウムやリンの代謝や骨の代謝のバランスをとってくれています

これが、腎臓の機能が低下すると副甲状腺が暴走してしまうのです

1-4|  慢性腎臓病の骨粗鬆症や骨折リスクを具体的な数字で見てみましょう

1-4-1| 腎機能低下が進むごとに骨粗鬆症リスクは上昇していきます

CKD患者さんの骨粗鬆症リスクは、

一般的にCKDステージ3(eGFR < 60 mL/min/1.73m²)から顕著に上昇し始めます。

具体的には:

1. CKDステージ3a(eGFR 45-59)から骨代謝異常が出現し始めます

2. CKDステージ3b(eGFR 30-44)以降で骨粗鬆症のリスクが明確に上昇します

3. CKDステージ4-5では、ほとんどの患者さんが何らかの骨代謝異常を持つようになります

1-4-3| 腎機能が低下するごとに、骨折の発症率も上がる

eGFR60以上の人の発症率を1とすると、腎機能ごとの骨折リスクを示します

                         大腿骨の骨折リスク

eGFR<45     2.32倍

45≦eGFR<60   1.57倍

Screenshot

参考文献 Ensrud KE, et al.Arch Intern Med 2007; 167:133‒139.

これは、腎臓の機能が低下するとでビタミンDの活性化がどんどんできなくなり、

副甲状腺の機能が亢進してしまうことと関連していると思います

1-4-4| 若い慢性腎臓病の方ほど骨折の○○率が高くなる

答え👉有病率

有病率とはわかりやすくいうと、その病気になったことがある人の割合です

75歳未満の慢性腎臓病の方は同年代の人と比べて骨折の発症が多いです

また、75歳以上では慢性腎臓病あるなしで骨折の有病率の差は少なくなります

✔️私なりの見解

75歳以上になると腎臓が悪くなくても骨密度は低くなるので骨折はしやすくなります。

しかし、若い時は慢性腎臓病があると、それが悪さをして骨折しやすくなってしまうので、

年齢により病気の有無で有病率の差が生じると思います

✔️私の実際みている臨床経験

透析の患者さんでは、骨折する方はとても多いです。特に圧迫骨折は多く、

それをきっかけに痛みで動けなくなってしまい、一気に体力が落ちていくのをよく目にします

1-5| 慢性腎臓病の方の骨折リスクが上がる要因4つ

副甲状腺機能亢進症意外にも以下の要因が考えられます

  • 喫煙や飲酒の既往がある
  • 低体重
  • 治療でステロイド治療を受けていた
  • 運動をしていなかった

またマクロレベルで、慢性腎臓病があると酸化ストレスなどが原因で骨密度だけでなく、

骨の質も低下をすることがわかっています

参考文献 Newman CL,et ai. PLoS One 2014;9:e99262

2、どんな検査をするとわかる?

2-1| 採血

骨代謝の異常があるかどうかの判断はCKDステージG3α(eGFR45〜59)から

行うことが推奨されています

具体的な採血内容は…

  • カルシウム
  • リン
  • インタクトPTH(副甲状腺ホルモン)

2-1-1| カルシウム値

低アルブミン結晶(アルブミンが4mg/dl未満)の場合は補正カルシウム値で計算してください

補正カルシウム値=(4.0-アルブミン値)+カルシウム値

正常値 8.4〜10.0 mg/dL,

上記でも記載したとおり、慢性腎臓病があるとカルシウムは下がりやすいです

2–1-2| リン値

正常値は 2.5〜4.5 mg/dL

腎機能が低下するとリンを尿から排泄できず、リンの値が高くなります。

高リン血症は CKD ステージ G4 以降(eGFR29位下)に出現することが多いです

2–1-3| インタクトPTH 値

正常値は 10〜65 pg/mL

リンと同様でCKDステージG4以降に高くなります

2-2| 骨密度測定

骨密度は大腿骨や椎体骨で測定をするのが正確です

測定法は3通りありますが,DEXA法が一番正確です

評価方法測定部位測定方法
超音波測定法(QUS)踵骨(かかと)など骨量によって超音波が通過する速度が異なる原理を利用した測定。 ※測定結果は骨密度ではなく「骨量」。 ※X線を使用しないので、妊婦でも測定可能。
MD(エムディ)法第二中手骨手の骨と厚みの異なるアルミニウム板をX線で撮影。骨とアルミニウムの濃度比較で骨密度を測定。
○DXA(デキサ)法腰椎、大腿骨、全身骨など2種類の低エネルギーX線使用の骨密度の測定法。

YAMと呼ばれる若い人の骨密度と比較した数値で評価します

– 80%以上:正常

– 70-80%:骨量減少

– 70%未満:骨粗鬆症

3一般的な慢性腎臓病の骨粗鬆症の予防や治療は?

答え;予防は運動、治療は活性型ビタミンD製剤と呼ばれる薬剤の内服が基本です

え、でも・・・

骨が脆いと言われると「カルシウムをとれば良くないの?」と思っちゃう

カルシウムを取れば骨は強くなると思うのが一般的と思います

しかし、腎臓の機能が低下していると、

カルシウムの吸収ができないためカルシウムをいくらとっても効果が出ません。

そのため、活性型のビタミンDの薬剤が必要になります

3-1| 予防編

骨粗鬆症予防・改善のための効果的な運動について、具体的にご説明します

3-1-1| 荷重運動(体重をかける運動)

ウォーキング

  * 1日20-30分程度

  * なるべく早歩きで

  * 平地だけでなく、緩やかな坂道も効果的

3-1-2|レジスタンス運動(筋力トレーニング)

 ✔️スクワット

  * 椅子を使って安全に行う

  * 膝が足先より前に出ないように注意

  * 10-15回を2-3セット

✔️カーフレイズ(つま先立ち)

  * 台の端などにつかまって行う

  * ゆっくりと上下する

  * 15-20回を2-3セット

3-1-3| バランス運動

✔️ 片足立ち

  * 1分間を目標に

  * 必ず何かにつかまれる場所で実施

  * 朝晩2回程度

3-1-4| ストレッチ

* 各15-30秒ずつ、痛くない範囲で左右を行いましょう

【太もも前後のストレッチ】

【 ふくらはぎのストレッチ】

【 背中のストレッチ】

3-2| 内服治療

 ①内服ビタミンD製剤

 カルシウムの値を見ながら、内服量の調整します

 ②リン吸着薬

 リンが高いと副甲状腺ホルモンが多く出て、骨粗鬆症が進みます。

 ステージ4以降ではリンが高い場合、食事制限やリンを下げる薬も必要になります

3-3| 注射剤

 デノスマブ(商品名 ®︎プラリア)

 骨粗鬆症の治療薬で、半年に1回投与する注射剤です

 ⭐︎作用機序⭐︎

普通、骨の吸収と骨を作る細胞はともにバランスをとっています

しかし、骨を吸収する細胞(破骨細胞)が過剰に働いている状況が、骨粗鬆症です。

この破骨細胞を止めるのが®︎プラリアという薬の機序です。

 PASS MED様より画像引用しています

®︎プラリアはカルシウムが下がるため、投与後カルシウム値の確認は必要です

3-4| 慢性腎臓病のステージごとの治療法

まとめた表ご覧ください

ビタミンDについてはこちらもご覧ください

まとめ

  • 慢性腎臓病ではビタミンDの活性化ができずカルシウムの吸収が低下やリンの尿中排泄が低下します
  • 上記の機序で副甲状腺の機能が亢進して、骨を壊していきます。
  • 骨粗鬆症や副甲状腺の状況のチェックはカルシウム、リン、副甲状腺ホルモン(インタクトPTH)や骨密度の測定が有用です。
  • 慢性腎臓病の副甲状腺機能亢進の治療にはまず活性型ビタミンDの内服から開始をします

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